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心のデトックス読書のススメ/心のビタミンになる、みずみずしい恋愛小説『百瀬、こっちを向いて。』

September 1, 2014
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こんにちは、橘です。

先日テレビを観ていたらタッキーが、
「がんばるのは当たり前だからがんばってるって言うな」
「がんばってくださいと人に言うのはときに失礼だ」
みたいなことを昔、ジャニーさんから言われ、
「だから自分でがんばってるって言わないようにした。
弱音は吐かなくなった」
というお話をしていました(若干ちがうかもしれない)。

ちなみにわたしの座右の銘(?)は、
「がんばれば夢は叶う、とは限らないけど、
がんばらなきゃ何もかもがゼロ」でして、
タッキーの美しい顔を見ながら、
「そうだよなあ、自分で自分ががんばってるって言うのは
おこがましいよなあ、みんながんばってるもんなあ」とか、
「タッキーも33かあ、年とるわけだ」とか(同年代です)、
「『木曜の怪談』のころはトリオだったのに
いちばん好きだった川野くんはいなくなってしまった……」とか、
「でも川野くんは『踊る大捜査線』とかで役者やってるし!」とか、
いろんな想いにふけっていたわけですが、
翌日、いま一緒にデスマーチを歩んでる、
っていうか先陣切って戦ってる上司に、
「だからわたし、がんばるって言いません!
いまわたしがつらいのも当たり前だって励まされました!」
みたいなことを宣言してみたらば、
「おまえ、バラエティ観て癒され始めたら終わりだから」
ってすげなく言われてしまいました。

なんの話かというと、疲れています。
こんなどうでもいいオチのない話を長々するくらいには、へろへろです。

で、なんかもうものすごく癒されたい!
長編とか読んでる体力ない!ということで、
短編集『百瀬、こっちを向いて。』を今回は紹介しようと思います。
どうでもいい前置きが長くてごめんね!

このコラムはじめてから、
「どうもウケがよいらしい」という邪な理由から、
毒っ気のある作品ばかりを紹介してきたんですけども、
今回ご紹介する小説は、その対極にあります。
胸キュン必至! 
久しぶりに読み返したら、
ときめきすぎて悶絶しそうになり、
見事心の回復をえられました。ヤッタネ!

今年の5月ごろに映画化されて、
向井理の写真つきカバーをまいて平積みしてる書店も多かったので、
見かけたことのある方も多いんではないでしょうか。

映画化されたのはどうやら表題作の
『百瀬、こっちを向いて。』だけだったっぽいですが、
本には4話、それぞれ初恋と片想いを描いた短編が収録されています。

主人公たちに共通しているのは、
教室のなかでとても地味で、目立つことなく、
これまで恋とは無縁で生きてきたまじめな高校生だということ。
自分がこの先どうなっていくのか、
はたして恋をするなんて日がくるのかもわからない、
そんな彼らがいつのまにか、自然に吸い寄せられるように恋に落ちている。
はじめての恋で、そして一方通行の想い。
その感情の揺れと変化、すれちがい。

全編とおして、とにかく美しい。
瀧井朝世さんの解説にも書かれていますが、
使い古された表現だけどどうしても「切ない」という言葉を使いたくなる。

美しくて、いとおしてくて、切なくて。
甘酸っぱくて、苦くて、激しさはないけれど痛みも想いも深くて。
そんな小説です。

実をいうとわたし、恋愛小説は苦手です。
でも中田永一さんの本は好き。
透明感があって、でも感情の濁りはちゃんと描かれていて、
読んだあとにいとおしさがこみあげる。
優しい気持ちになれるのです。

最後に。
4話のくわしい内容は、検索すれば出てくるので、
あらすじがわりに各話からフレーズを引用しておきますね。

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「あんなやつ、知らなけりゃよかった。ずっと他人ならよかったのに」
 彼女はなんてことをしてくれたんだろう。(略)罪深いにもほどがある。
思い出のひとつひとつが、後で僕をどん底につきおとすにちがいない。
僕にとっては猛毒だぞ。僕はもう弱くなってしまった。
一人でいることが普通であたりまえのはずだったのに。

(「百瀬、こっちを向いて。」)

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 これが例の、あの感情かもしれないとおもうことがある。
今すぐにでもあいつのいるところにはしっていきたいような気もする。
だからといってすぐにあうことはできない。(略)
わたしはこの感情を、信じていいものかどうかわからない。
これが友情ではないと言い切れない。
ほんとうのきもちがたしかになるまで、あいつにあわないほうがいい。

(「なみうちぎわ」)

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 先生の声が煙になって空にのぼっていった。
あきらめたから、そうするのではない。むしろ逆である。
そんなものを大事に所有していたから、一歩をふみきれなかったのだ。
関係性が変化したってかまわない。このまま、なにも言わずにいるよりも。

(「キャベツ畑に彼の声」)

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 彼の口から小梅という名前が出ると、いらついてしまう。
ほかの人が小梅のことを話しても、さっきみらいな口調になるとはおもえない。
山本寛太がうかれたように、小梅、小梅、と何度も言うのがたえられなかった。
いったいなぜだろうか、と心の中でつぶやいてみる。(略)
「まだ自分のきもちに気づかないの? それとも気づかないふりをしてるの?(略)」

(「小梅が通る」)

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余談ですが、中田さんの小説をよむと、
ああ日本語って美しいなあ、ひらがなっていいなあ、としみじみ思います。

『百瀬、こっちを向いて。』

 

『百瀬、こっちを向いて。』中田永一
祥伝社文庫 571円(税抜)

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美伝子Labライター

フリーライター作家橘 もも
講談社X文庫ティーンズハート大賞<佳作>受賞して作家デビュー。

大学卒業後、ダ・ヴィンチ編集部にて雑誌&書籍の編集者として勤務しつつ、作家業を続ける。現在は、フリーでライター・編集業(立花もも)、作家業(橘もも)の二足のわらじ。小説のほかにも、映画やゲームのノベライズ、絵本やノベライズの翻訳などを手掛ける

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