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心のデトックス読書のススメ・ひとごとじゃない日常にひそむ毒(ペテロの葬列

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こんにちは、橘です。
寝不足です。
仕事が忙しいから、ではなく、
今回のコラム原稿も書き終わってないくせに、
700ページ近くある小説を一晩で一気読みしたからです。

いやもうだって! 面白すぎて!
もう読んだことあるやつだったけど、
先の展開も知ってたけど、それでも止まらなくて!

というわけで予定していた本から急きょ変更し、
今回はその小説をご紹介したいと思います。

その名も『ペテロの葬列』。
宮部みゆきさんのミステリーで、
現在、月曜夜8時からTBSにて放送中の同名ドラマの原作です。

ドラマをご覧になってる方はご存知かと思いますが、
この『ペテロの葬列』はシリーズ第3弾。
『誰か somebody』『名もなき毒』に続く、杉村三郎シリーズ最新刊です。

主人公の杉村は、いわゆるマスオさん。
そうと知らずプロポーズした彼女が、
実は日本を代表する大企業の会長の娘で、
結婚するために好きだった編集の仕事もやめ、
その企業の社内報を編集する部署で働くことに。

ただし彼女は妾腹のため、会社の権利をもらうことは一切なし。
金銭的な恩恵を受けることはあれど、
家族にも絶縁され、一族のなかでも白眼視され、
会社でも「会長の婿殿」として敬遠され、
義父や義兄たちとの関係が良好であることが唯一の救い。

そしてなによりそうまでして結婚したかった妻と愛娘に囲まれ幸せな、
本人的にはいたって平凡な男です。

が、まあミステリーなのでね。
そんな彼が毎回、色んな事件に巻き込まれるわけですよ。

宮部さんの小説にはいつも、
日常の、ありふれた感情のひずみ、みたいなものが溢れています。

どうして私ばっかり。
誰も私をわかってくれない。
ずるい。
くやしい。
ねたましい。

そんな、フィクションと一括りにできない、
わたしたち誰もが抱えている「穴」のようなもの。

特に杉村は、
「いい奥さんもらっていい暮らしして、なんでも手に入れて幸せな奴だ」
と、無用なやっかみを受けやすい。
そのせいもありやたら事件に巻き込まれるわけですが、
たぶん理由は彼の環境にだけあるのではなくて。

杉村は基本的に、「善人」です。
主観と客観なら客観を優先できるし、理性で行動できる。
物事を常に俯瞰し、ガマンすることも知っている。
わきまえている、ということもあるのでしょうが、
ある意味でいい人すぎる。

だからたぶん、他者の攻撃を受けやすくもなってしまう。
だってね、感情にまみれて怒りや悲しみが爆発しているときに、
理性や正論っていちばんいらないじゃないですか。

「私はこんなにつらいのに、苦しいのに、
どうしてあんたはそんな涼しい顔をしていられるんだ」
「あんたには私の気持ちなんてわからない!」

親なり彼氏なり、身近な人に
そんなふうにおもうこと、大なり小なりありませんか?
もちろんそれは八つ当たりだってわかってはいるけれど。

かなしいかな、彼のように主張のない人間ほど妬み嫉みを受けやすい。
だって「見て見て私ってすごいでしょ」って思ってる人は
妬まれたとしても「ふふん、羨ましいのね」と思っておしまいですからね。

余談ですがわたし、大学生くらいの時から、
心に決めてずっと実践できていないことがあるのです。
それは、
「自分のことは自分がわかってあげればそれでいい、
だからむやみな主張はしないようにしよう」
ということ。

だけどずっとできていない。
自己顕示欲まみれで三十年を生きています。

だけどそんなわたしでも、ふとした攻撃を受けて打ちのめされることがある。
自分がなーんにも意識していない、
自慢するつもりも威張るつもりもなくて、素の状態でいる、
よりにもよってそんなときに、
不意に誰かの悪意を受けたりする。
うっかり甘言に乗せられ騙されたりもする。

そんなもんなんですよね。

そういう「毒」を、たぶん杉村は受けやすい。
そしてそれを、どんなことがあっても受け流し、
解決し、結論に導いていくこともできる。
だからこそ彼は、探偵向きなのです。

3作すべて、そうした日常の「毒」から生まれた事件を、
彼が期せずして解決していく、というシリーズ。
どれもこれも身につまされる案件なので、読んでいて胸が痛くなるのですが、
それ以上にね……。
彼自身の日常もやるせなくてね……。

『名もなき毒』を読み終えたときに感じた不穏さが、
まさかまさかと思ってはいましたが、ラストで放出されまして。

ドラマだけ観ている人のなかにも、
すでにピンときている人は多いと思いますが、
もうなんていうか、なんとなくわかってたけどやっぱりそうなるのか!というラストに、
「杉村あああああああ」と悶絶しきり。
やるせなさすぎて。
でもそれが、絶望だけかといったらそうではなく。
ううう。これ以上は言ったらネタバレだから言えない。
読んで同じ気持ちになった人は、個人的に共有しましょう(笑)。

ともあれ、面白いことには間違いがありません。
しかもこのドラマは、原作ファンがドラマを観ても、
ドラマで気になって原作を読みはじめても、
どちらから入っても面白いし楽しめる、という稀有な作品なので、
ぜひぜひ、ドラマファンも原作を読んでみてほしいです。

ちなみに今回の『ペテロの葬列』のキーワードは「詐欺」。
人間のちょっとした欲だったり、
誰かをうっかり信じてしまうことだったり、
善意が生む悪意だったり。
「よかれ」が本当にいいことって、実はあんまりないですからねえ……。

読めばきっと、自分には関係ない、なんて言えなくなるはずなので、
ぜひぜひ、宮部ミステリーの深みにハマってみてください。

この作品だけ読んでも楽しめると思いますが、
前2作は文庫化しているのでそちらもぜひ!

 

『名もなき毒』1800円 集英社

About The Author

フリーライター作家橘 もも
講談社X文庫ティーンズハート大賞<佳作>受賞して作家デビュー。

大学卒業後、ダ・ヴィンチ編集部にて雑誌&書籍の編集者として勤務しつつ、作家業を続ける。現在は、フリーでライター・編集業(立花もも)、作家業(橘もも)の二足のわらじ。小説のほかにも、映画やゲームのノベライズ、絵本やノベライズの翻訳などを手掛ける