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心のデトックス読書のススメ/男女のすれ違いをひもとく名著『異性』

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先日、しりあいから「私は男脳だ」という話をされたのですが、
男的とか女的とか分類している時点でそれは非常に女っぽいというか、
「自分は男らしい女だ、と言いたがる女性」の
類型のひとつではないかしらん、と思う……ものの、
面と向かって言うと怒られそうで言えない橘です。こんにちは。

とはいえ、男女の性差というのは血液型区分よりはあるもので。
だれもが一度は「これだから男は!」とか、
「女ってやつはまじでめんどくせーな」とか、
感じたことがあると思います(きっと同性同士でも)。

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そんな男女の精神的すれ違いをひもとく手がかりとなる名著が、
角田さんと穂村弘さんの往復エッセイ『異性』です。

——女性はものごとが変化変容するということを本気でおそれている。
嘘でもいいから「変化しない」と言ってほしいのだ。
それを言わない男性というのは、
変化ではなく固定をおそれているのではないだろうか。(角田)

——でも、実際の変化に弱いのはむしろ僕らの方だ。(穂村)

——女性は何かひとつ、変化しないものを切実に求めている。(角田)

——その「何かひとつ」として異性との絆が選ばれるっていうのが、
最大の謎に思えます。(穂村)

——「好きな人」しか目に入らないことの度合いが、
男とは比較にならないほど大きいのは何故だろう。(穂村)

——オールでもいや、ナッシングでもいや、女は面倒くさいなあ。(角田)

というような形で、交互にエッセイ形式で語られていくんですが、
これがまー、いちいちぐさっときたり、はっとしたり。

最初の「変化」の話については
「私のこと好き? ずっと好き?」と聞きたがるのはたいてい女性で、
男性がその答えをしぶるのは
「あのときずっと好きって言ったじゃん!」と
いつかの未来で責められるのをおそれているからではないか、
というような話だったのだけど、
その「言質を避けて責められる可能性を1%でも減らす(結果、別の形で責められる)」
というのはものすごく男性のあるあるのような気がする。

対して穂村さんは、
「でもリストラされて自殺するのって男性のほうが多そうだし、
離婚して羽ばたくのも女性だっていうし、
きみたち変化に弱いんじゃなかったの!」という疑問を展開をした結果、
角田さんが「ほんとだ! わたしたち、変化にめっぽう強い!」
と気づくに至るというやりとりがあったりして、
お互いがお互いの言葉にはっとしつつ、納得をし、
そして新たなすれちがいと疑問を生みだし、またはっとして、
という応酬が、読んでいてほんとうにおもしろい。

という話をしていると、
「わたしそういう女子っぽい質問しないし〜」という女性が
一定数あらわれるかと思うのですが、
そういう人が、だからといって本当に男っぽいのかというと
別のシーンで女らしさを全開にしていたりするので、
女っぽさ・男っぽさというのは表面上の話では
ないんじゃないかなと思うんですよね。

(だってそういう人は
「言葉はいらないから態度で示せ」とかいいがちだし、
それってむしろ「言葉だけじゃ許さない」という
もっと深いラインでの“変化しないもの”を求めているということで、
「私のこと好き〜?」とかいう女の子よりよっぽど女っぽくて面倒くさい、
のではないかと思う。
……はい、私もよく言います。すみません)

だいたい、女性の言う「男らしくない!」は、
「(私の思う理想の)男らしくない」ということで、その逆もまたしかり。
そしてその、女性が求める理想の男らしさは
男性が本来あまり持ち合わせていないものっていうか、
むしろ女性が発揮しているところしか見たことない男気だったりする気がする。

そもそも、ジェンダーフリーの進みはじめた世の中で、
個人を男か女かではかることじたいがナンセンス、
という意見もあるとは思いますが、
「差別ではなく区別はどうしたって必要だと思うようになった」
と本文中で角田さんがおっしゃっているのが
私にはいちばんしっくりきました。だってまあ、あるよね、そういうこと。

だけど一方で、おふたりの往復エッセイを読んでいると、
「ちがう」はずなのにどこか溶け合っていくような感覚をおぼえはじめて、
男も女も本当はなくて、みんな一緒なんじゃないか、
という気にもなってくる。
だってどっちの言うことも、私の中に「ある」ことだから。

でもこれが危険。
おんなじだぁ、と思ったとたん牙を向く。
それこそが人間関係の醍醐味でおそろしさ。

だから今日も私たちは、近づいたり離れたりしながら、
かわいい小競り合いをくりかえしているんだろうなあ、
なんてことを、思ったりする今日この頃なのです。

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『異性』
角田光代、穂村弘 河出文庫 572円(税込)

※写真は単行本ですが、文庫版も発売してます。

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About The Author

フリーライター作家橘 もも
講談社X文庫ティーンズハート大賞<佳作>受賞して作家デビュー。

大学卒業後、ダ・ヴィンチ編集部にて雑誌&書籍の編集者として勤務しつつ、作家業を続ける。現在は、フリーでライター・編集業(立花もも)、作家業(橘もも)の二足のわらじ。小説のほかにも、映画やゲームのノベライズ、絵本やノベライズの翻訳などを手掛ける